狐ヅラにっき

狐っぽい顔した男の書きなぐり

事故紹介

 

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最初のポストなので本当は自己紹介をすべきだが、事故紹介が自己紹介に十分相当する気がしたのでそうさせてもらう。


車と言えばご存知、あの四輪の金属塊がブーンと走るあれだが、僕は高校三年生の時に地元の教習所で免許を取得した。僕は地元を離れて少し遠い高校に通っていたのでそこで再会する地元の面々、中でも卒業後にはどう考えても遊ばないようなやつとの再会などを楽しみながら(ミシュランマンみたいに団子状に太ってしまったやつ、マックのバイトで足にポテトを揚げるための熱々の油をぶっかけられてアキレス腱断裂、そのせいでクラッチに力が入らずエンストしまくって怒られている地獄みたいな状況の元同級生などを観測)、嫌なおっさんばかりが指導してる教習所を晴れてクリアした。


この時の僕はそれから5年で計4台の車の破壊に成功し、最終的にあっけなく免許を没収されることになることは知る由もなかった。

中でもダイナミックだった事件をご紹介しよう。

ある冬の日の朝9時、同じ会社を経営する仲間を乗せた僕は意気揚々と目的地に向かっていた。とても寒い日だったが、僕の心は晴れやかだったので、千と千尋の神隠しの歌を熱唱していた。何度目かのサビに差し掛かったところ、異変は起きた。

 

「呼んでいる〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!?????」

と、恐らく呼んでいることだけは間違いのない某主題歌の内容をあろうことか疑問形にしてしまったのは、タイヤがコントロール不能に陥り、滑りまくったからである。

 

そのままふわ〜〜っと車体が傾き、90度倒れ、さらにそこから90度倒れる。そのままドガッと発電所の壁を破壊しながら停止、車は完全に逆さまになっていた。


車内は地面を無くしたタイヤがカラカラと空を切る音だけが響き、静けさに包まれた。僕は砕け散ったフロントガラスが眼球に降り注ぎ、目が開かず、多分失明したと思った。座頭市状態の疑いがある上にブレーキとアクセルの隙間に挟まった右足で天地無用のこうもりと化した僕はその瞬間、限りなく妖怪に近かったと思う。

 

車内の後ろのメンバー二人は「ウゥ..」とか言いながら後部座席の窓から這い出していった。もうほとんど「はだしのゲン」の世界である。

僕は失明を覚悟して目をそっと開いて見たら、特に何の問題もなくガラスがパラっと落ちて視界にありつけた。

 

運転席のドアを蹴り飛ばして外に出ると、特に誰も何の怪我もしていなかったことがわかり、少し頭がおかしかった僕らはついにダッハッハハハと笑い始めた。
誰かが死んだと全員思ったのでそのシナリオを回避した安堵感とマンガ感のある事故の純然たる面白さに笑いが止まらなくなってしまった。

 

その日は路面凍結がひどい日で、自家用車と東京電力の壁を破壊した僕らは依然としてへらへらとしていたせいで道行く人に奇怪な目で見られつつ、レッカー車が来るまで暇なのでひっくり返ったワンボックスカーをあらゆる角度で撮影していた。

 

その日の晩、もう一人のメンバーが帰社し、「あれ、車は?」と僕に聞くも、「さぁ?」とぼけた顔して取り合わない。

当然釈然としない面持ちでトイレに立った彼のipadの壁紙を、先ほどの撮影会でゲットしたマッドマックス状態の車に変えて、顔色変えずに仕事に打ち込む。

要するに僕と言う人間はそんな感じのやつなのである。